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【2017/12/13 04:46 】 |
昔々


「遠い昔のこと、憶えてる?」

「……昔…?」

 僕はもう、眠くて目が開けられない。

「そう。ずっと昔のこと。
 その頃わたしたちはきょうだいでね、
 一緒に暮らしていたの」

 僕の髪を撫でる音。
 さらさら、さらさら。

「わたしたちは仲が良くて、
 毎日一緒に遊んだわ」

「……そんなの」
 知らない。
「そうよねえ」
 笑いを含んだ声が返ってくる。

「わたしは、あなたとずっと一緒に暮らしていけるんだと思ってた。
 でも、ある日あなたは結婚して家を出て行ったの」

「へー……」
 なおざりな相づちにも、
 僕の髪を撫でる手は止まらない。
 さらさら、さらさら。

「わたしは寂しくってね。
 あなたもきっと同じ気持ちだろうと思って、
 しばらく経ってから、あなたに会いに行ったのよ」

 手が止まる。
 ため息が、僕の額をくすぐる。

「そしたら、あなた幸せそうなの。
 結婚相手と手を繋いでね、赤ちゃんを抱いてね、
 にこにこしながら、わたしを迎えてくれた」

「……結構じゃないか」

「そうね。
 そして、わたしはその日の夜、あなたの赤ちゃんを殺して逃げた」

「……は……?」
 よく、聞こえなかった。

 彼女は早口で囁く。
「逃げながら、わたし考えたの。
 どうすれば、あなたとずっと一緒に居られるかって」

 うふふ、とはっきり彼女が笑った。
「結局、わたしは捕まって、死罪になったんだけどね。
 その時思いついたのよ、あなたとずっと一緒にいられる方法。
 だから、今は一緒にいられるの」

 わたし、幸せだわ。
 その声が耳に残ったまま、僕は眠りに落ちた。





 目が覚めて、飛び起きた。
 見回すと、洗濯物を抱えた彼女が驚いた顔をしてこちらを見ていた。
「どうしたの? 今の起き方すごかったよ。
 悪い夢でも見た?」
「夢、じゃないと思う……。
 あのさ、僕が寝る前に、何か言った?」
 僕がそう聞くと、彼女は首を傾げた。
「え、何?
 お弁当の話?」
「いや、それじゃなくて……」
「んー? じゃあ知らないよ?
 私、さっきまで台所にいたし」
「……そっか」
 僕は深く息を吐いて、寝ぼけた頭を覚醒させる。
「……夢、だったのかな…」

 ただ、あの笑い声だけは、忘れられない。






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【2014/09/20 12:16 】 | 散文(短編) | 有り難いご意見(0)
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